講演レポート

  • 基調講演
    三木谷浩史(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)

    ネットが未来を変えていく
     楽天テクノロジーカンファレンス2009は、弊社社長の三木谷の基調講演により幕を開けた。三木谷は「楽天は創業時よりシステムを自社開発しており、技術を社内に蓄積する方針を貫いてきた。ビジネスモデルのブレイクスルーに加え、この技術重視の姿勢が今日の楽天の成功を支えている」と、楽天の成功が技術力に支えられたものであると語り、今後も自社で技術革新を行っていくビジョンを語った。

     さらに今後の楽天の大きなテーマとして「国際展開」を挙げ、日本発のインターネット企業として、世界へ進出してく方針を語り、そのために技術力の向上は引き続き取り組むべき課題であると語った。また、「インターネットテクノロジーは社会の未来を変えていく存在であり、今後ますます高度化し、求めされる計算量も幾何級数的に増えていくだろう。」と語り、楽天も技術のオープン化を進め、WEB技術の発展に貢献していきたいと語った。
    【写真】三木谷浩史
  • 基調講演
    よしおかひろたか(楽天株式会社 / カーネル読書会主宰)

    楽天の中のわたしと勉強会
     昨年の楽天テクノロジーアワード金賞受賞者であり、また今年8月に楽天に入社したばかりの”新入社員”であるよしおかひろたかは、内側から見た楽天の現状と、これからの時代のエンジニア・組織のあり方を語った。

     組織は肥大化するとタコツボ化が進み、風通しが悪くなってくる。組織を融合していくための効果的な施策としてよしおかは「社内コミュニティ」を提案する。社内コミュニティは、縦も横もない「志を共有するメンバー」で構成される活動で、勉強会の開催などを通じて技術や文化の融合をはかっていく。よしおかは最近の事例として楽天社内で開催したカーネル読書会を紹介した。「勉強会には社員、会社の双方に大きなメリットがあり、そのメリットは開催のコストを大きく上回る」と、よしおかは勉強会への参加意義を熱く語る。

     さらにこれからの時代は、技術が会社のものでなく社会のものになる「オープンイノベーション」の時代であるという自説を示した。個性的なWEB企業が割拠する日本では、それぞれの会社の技術者が勉強会を通じてゆるやかにつながっており、オープンイノベーション的な価値観を共有しているという。

     最後に、よしおかは自身のミッションを「楽天の芸風を変える」ことであると定義し、開発者コミュニティを醸成することによって、社内外の開発者を元気にしていきたいと今後の抱負を語った。
    【写真】よしおかひろたか
  • 講演
    橋本健太(クックパッド株式会社 最高技術責任者)

    日本最大のRailsサイト、クックパッドのものづくり
     「ベストなことに集中する」「ユーザーの欲求に基づいたゴール設定」「3分割の法則」がクックパッドのサービス開発・運営を行う上でのフレームワークだと語る橋本氏。3分割の法則ではプロジェクトを設計、開発、質を高めていくフェーズの3つに分割し、それら全てに同じ時間をかけるというスケジューリング法を紹介。Ruby on Railsで開発されたサイトとしては世界有数という大規模サービスを運営する上での考え方やルールが多く紹介され、来場者も興味深く聞き入っていた。
    【写真】橋本健太
  • 講演
    太田一樹(株式会社Preferred Infrastructure CTO)

    列指向データベースについて
     株式会社Preferred InfrastructureのCTOである太田氏が、列指向データベースについて解説した。
    マニアックなテーマながら満席になり、急遽座席が追加されるなど人気の高い発表だった。
    通常のRDBMSの様に行単位ではなく列単位でデータを配置するため、特定の列のみの読取や更新が得意で、似たデータが連続するので圧縮率が高くなるといった特性を持つ列指向データベース。
    その特性から、データマイニングやBI、ログデータの保存などにも向いているとし、実際に使用できるプロダクトやよく使われる圧縮手法、参考になる論文について語った。
    【写真】太田一樹
  • 講演
    仲宗根徹也(楽天株式会社 チーフアプリケーションエンジニア)

    楽天市場を取り巻く状況と開発
     日本最大のECサイト「楽天市場」の開発・運用チームでリーダを務める仲宗根は、ピークタイムのトラフィックが1000件/分を超える大規模サービスのシステムの裏側を紹介。多種多様な要望が寄せられる一方で、開発のスピードを同時に求められる状況の中、サービスを安定運用しつつ生産性を高める手法について語った。また、複雑化するシステムについて問題意識を感じていると語り、今後の課題としてRDBMSからの脱却などを挙げ、さらにスケーラブルな構成にしていくと展望を語った。
    【写真】仲宗根徹也
  • 講演
    西澤無我(楽天技術研究所 シニアサイエンティスト)

    ROMAについて
     ROMAの特徴や楽天での利用事例について開発者の西澤が紹介した。ROMAの特徴として、動的なスケールアウト、耐障害性の高さ、そしてプラグイン機構による拡張性の高さなどをあげ、実際に楽天で導入する際に行なわれた拡張等も紹介された。
    シークレットゲストとして登場したまつもとゆきひろ氏も見守る中、以前からの公約であったオープンソース化を果たすために壇上のPCから直接GitHubにpushが行なわれると、会場からは拍手が巻き起こった。
    【写真】西澤無我
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